アロマテラピーを導入している企業が増える中、「いつか病院や施設でアロマテラピーを導入したい!」、そのように考えている方も多いでしょう。しかし、アロマテラピーついて、よく理解している方は少ないはずです。そこでまずは、看護師や介護士など医療従事者の方々に、アロマテラピーを知って頂きたい、その心地よさを実感してもらいたいと思いました。さっそく、「アロマテラピーのメリットやデメリット」「そもそもアロマテラピーとは何か?」をご紹介します。
アロマテラピーを導入する上でのメリットとデメリット
アロマテラピー導入メリット
メリット1 療養生活の質の向上- 「根本的な治療薬がない認知症」、「強い痛みを感じるがん」などにも応用でき、苦痛を和らげることが期待できます。
- アロマテラピーは、家庭や外出先でも簡単に取り入れられます。
- 香りの刺激は、嗅覚から脳にダイレクトに伝わり、短時間でアロマテラピーの作用を感じることができます。
メリット2 話題作り&コミュニケーションツール
- 優しい天然の香りは、性別や年齢を問わず誰にでも受け入れられやすいものです。
- コミュニケーションを取ることが難しい方でも香りが会話のきっかけになります。
メリット3 患者さんのご家族・看護師・介護士自身のケアになる
- 好きな香りを嗅ぐと、自律神経のバランスが整い、深いリラックス状態になります。
- 患者さんだけではなく、その周囲にいる方々の健康もサポートできます。
アロマテラピーを導入する際のデメリット
デメリット1 アロマテラピーに抵抗がある方、苦手な方への配慮- 患者さんそれぞれの香りの好みや状態(高血圧など)を理解しなければいけません。
- 香りは空気中に広がるため香りの届かない別室を用意するなど、柔軟な対応が求められます。
デメリット2 精油に対するスキルと医療スタッフとの連携が必要
- アロマテラピーの知識や技術が必要です。
- 主治医やケアマネージャーの許可を得るなど医療スタッフとの連携や情報共有が大切です。
デメリット3 保険適応外のため費用が掛かる
- アロマテラピーで使用する精油の価格は、500円~10,000円以上するものまでさまざまです。
- 日本では健康保険適応外のため、精油の材料等すべて自己負担になります。
植物の力!アロマテラピー
アロマテラピーとは?
当たり前過ぎる話ですが、植物には人のように足も手もありません。どんなに暑い場所でも、どんなに外敵が多くても、移動できないのです。そのような過酷な状況でも生きていけるよう、植物が身を守るために作り出したものが香りです。たとえば、虫の好きな香りを出して虫を引き寄せ花粉を運ばせたり、バリアのような香りを出して有害な菌から身を守ったり、汗のように香りを出して体を冷やしたり、さまざまな作用があるのです。
この植物の香りやその作用を応用して、人の心身の健康や美容へ役立てようとする考え方が、実はアロマテラピーです。植物の香りやその作用は、嗅覚から体の司令塔である脳へ伝わり、自律神経、内分泌系、感情へ好影響を与えます。
精油とは?
アロマテラピーで使用するのは、植物から抽出した100%天然の精油(エッセンシャルオイル)です。よくアロマオイル、フレグランスというような商品がありますが、これらは人工的に作り出した香りが多く、精油本来の作用が期待できません。必ず、100%天然植物成分の精油を使用しましょう。
精油の注意事項について
精油は、酢酸リナリル、1.8-シネオール、リモネンなどの成分が集まってできています。しかし、天然であるがゆえ、そのすべてが解明されているわけではなく、必ずしも安全とはいえません。アロマテラピーを安全に楽しむために下記の注意事項を守りましょう。
①原液を皮膚に塗布するのは禁止
②飲用の禁止
③目に入れない
④子どもやペットの手の届くところに置かない
⑤火のまわりや高温多湿の場所に置かない
⑥3歳未満の子どもには、芳香浴以外は使用しない
⑦ベルガモット精油やレモン精油には光毒性があるため、外出前後のアロマトリートメントには使用しない
⑧香りや色が変化し劣化した精油は使用しない
代表的な精油とその特徴
真正ラベンダー
- フローラルで甘く穏やかな香り
- 比較的安全性が高く、子どもから高齢者まで使える
- 主成分の「酢酸リナリル」が自律神経のバランスを整え、リラックスや安眠効果が期待できる
- 鎮痛作用、鎮静作用、殺菌作用、抗菌作用、防虫効果など
オレンジ・スィート
- おひさまのように温かくフルーティーな香り
- 誰にでも好まれ、リーズナブルで使いやすい
- 主成分の「リモネン」には、血流を良くしたり免疫力を高めたりする効果が期待できる
- 鎮静作用、鎮痛作用、抗菌作用、加温効果、食欲増進作用など
ヒノキ
- 高齢者が好む、森林浴のような深い緑の香り
- 気持ちが落ち着き、リラックスできる
- 抗菌作用、消臭作用、防虫作用など
ペパーミント
- スッキリとする清涼感のある香り
- 虫除けとしても使用することが可能
- 主成分の「ℓ-メントール」は、筋肉痛や虫刺さされのかゆみ止めなど外用薬に使われている
- 胃痛、頭痛、筋肉痛、花粉症を和らげる
ティートリー
- スパイシーなグリーン系の香り
- 抗菌作用が強く、ニキビや水虫のケアに適している
- 鎮静作用、鎮痛作用、抗菌作用、抗真菌作用、抗ウィスル作用など
看護・介護のSOSに応える!アロマテラピーの活用法
芳香浴
空気中に拡散して香りを楽しむ方法
精油を1~2滴、コットンやティッシュペーパーに落としデスクや室内に置いたり、アロマポットやディフューザーなどの専用器具を使ったりして、空気中に香りを拡散します。精油の有効成分が鼻から入り、気管支や肺へ、そして血液中に溶けて全身へと伝わります。精油が皮膚に触れないため、作用が穏やかです。風邪予防やインフルエンザ予防にも役立ちます。
アロマバス(沐浴、手浴、足浴、湿布、清拭)
事前に乳化させた精油をお湯に落とし、全身または一部を浸ける方法
精油は水に溶けにくく、原液が皮膚に触れるとトラブルが起きやすいため、事前に精油を無水エタノールや天然塩で乳化させてから使用します。精油は、浴槽なら1~5滴、洗面器なら1~3滴ほど落とします。呼吸器や皮膚から精油の成分を取り込みます。
入浴できない場合は、このお湯をタオルに浸してしぼり、湿布にしたり清拭したりすることも可能です。
アロマトリートメント
精油を植物オイルに混ぜてトリートメントオイルをつくり、それを皮膚に塗布する方法
精油の成分を皮膚から直接的に取り入れます。精油に含まれる鎮痛作用や鎮静作用、そしてタッチングによる心地よさから、痛みの緩和に役立ちます。なお、使用する精油は1%以下の濃度にし、事前にパッチテストが必要です。また、オイルを使用すると大変滑りやすくなるため、最後にタオルでオイルを拭き取りましょう。
まとめ
アロマテラピーへの理解は深まったでしょうか?アロマテラピーにはメリットもデメリットもあります。それでも、先行きの見えない病気を抱え、緊張感のある日々を過ごす患者さんにとっては、ひとつの希望になります。是非、アロマテラピーで心地の良い時間や空間を作ってください。また、アロマテラピー初心者の方は、まずは好きな香りを手に取ってその香りの良さを体験してみてください。