精神訪問看護とは?精神疾患の種類や病状、介入への条件や役割など解説

精神障害者への看護

はじめに

精神科訪問看護は、1994年(平成6年)の健康保険法等の一部改正で、精神障害者も訪問看護をうけれるようになり、精神疾患をお持ちの方や心身のケアを要している方々へ、看護師や精神保健福祉士・作業療法士などの有資格者が直接ご自宅や入所されている施設に訪問し、ケアをしたり、相談・助言・援助などトータル的なサポートを提供します。

精神訪問看護を実施しているステーションの割合は、平成18年で35.5%、平成21年で49%、平成23年で59.4%と年々需要が増えてきています。

ここでは、精神訪問看護の介入の要件や役割、位置づけなどを解説していきたいと思います。

精神疾患の種類や病状

まずはじめに、精神疾患の種類や病状について、いくつか挙げていきたいと思います。

統合失調症

統合失調症は、主に幻覚や妄想がみられる特徴的な精神疾患です。客観的に自分をみたり、振り返って考えることが難しくなりやすいという特徴も併せています。
※以前は精神分裂病という病名でしたが、統合失調症へと名称変更されました。

アルコール依存症

アルコール依存症は、決して本人の意思の弱さやだらしなさが原因ではなく、習慣的に飲酒をする方であれば、どなたでもなりえる、身近でとても怖い病気です。アルコール依存症は、習慣的な多量飲酒が原因でアルコールにより脳がハイジャックされた状態です。そのため、自分の意思ではお酒の飲み方をコントロールできなくなります。

うつ病

うつ病の原因は、外因性あるいは身体因性、内因性、心因性あるいは性格環境因性と分けれます。
身体因性うつ病とは、アルツハイマー型認知症のような脳の病気、甲状腺機能低下症のような体の病気、副腎皮質ステロイドなどの薬剤がうつ状態の原因となっている場合をいいます。
内因性うつ病とは、典型的なうつ病であり、普通は抗うつ薬がよく効きき、治療しなくても一定期間内によくなるといわれていますが、本人の苦しみや自殺等の危険性などを考えると、早く治療したほうがよいと思います。

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつです。うつ状態だけが起こる病気をうつ病といいますが、このうつ病とほとんど同じうつ状態に加えて、対極の躁状態も現れ、これらが繰り返される慢性の病気になります。

強迫性障害

強迫性障害は不安障害の一型で、その病態は、強迫観念と強迫行為に特徴づけられます。強迫観念は、無意味ないし不適切、侵入的と判断され、無視や抑制しようとしてもこころから離れない思考や衝動およびイメージなどで、強迫行為はおもに強迫観念に伴って高まる不安を緩和および打ち消すための行為で、過剰であることを自ら認識してやめたいと思いつつも、駆り立てられる様に行う行為です。

摂食障害

摂食障害は、単なる食欲や食行動の異常ではなく、体重に対する過度のこだわりがあったり、自己評価への体重・体形の過剰な影響が存在する、といった心理的要因に基づく食行動の重篤な障害です。
摂食障害は大きく分けて、神経性食欲不振症(AN)神経性過食症(BN)に分類されます。

パニック障害・不安障害

パニック障害の症状は、パニック発作 、予期不安 、広場恐怖があり、中でもパニック発作、それも予期しないパニック発作がパニック障害の必須症状であり、予期不安、広場恐怖はそれに伴って二次的に生じた不安症状になります。
不安障害は、精神疾患の中で不安を主症状とする疾患群をまとめた名称になります。特徴的な不安症状を呈するものや、原因がトラウマ体験によるもの、体の病気や物質によるものなど、様々なものが含まれています。中でもパニック障害は、不安が典型的な形をとって現れている点で、不安障害を最も代表する疾患といえます。

PTSD

PTSDは、体験したショッキングな事や、強い精神的ストレスがこころのダメージとなり、時間が経過した後でも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。PTSDの原因の多くは、震災などの自然災害や、火事や事故、暴力といった犯罪被害などといわれています。

認知症

まず注意していただきたいのが、物覚えが悪くなった物忘れがひどいなどの、いわゆる「ものわすれ」は脳の老化からくるもので、認知症ではありません。
認知症と、ものわすれの違いについては、以下参考ページを貼っておきます。

認知症は、病気などのなんらかの理由により脳の神経細胞が減少や破壊されて、日常生活が正常に送れない状態になることをいいます。認知症には、種類がいくつかあり、脳にある特殊なタンパク質(タウ)やアミロイドβが蓄積されることで起こるアルツハイマー型認知症(通称アルツハイマー)は、認知症の中でも最も患者数が多いです。

精神訪問看護で介入する場合の準備や前提条件

精神訪問看護で利用者様に介入するにはいくつかの条件が必要になります。以下条件を挙げていきます。

精神訪問看護の研修(受講)

精神障害者への訪問、いわゆる精神訪問看護の実施には、事前に研修を受けている有資格者でないと介入できません。精神の研修は、いままでは決められた精神の研修ができる会場に出向き、3日ほど受講をし、精神の修了証がもらえましたが、2020年現在では研修をWEBで行えるようになりました。WEB受講の場合は、約20時間で精神の受講が完了し、PDFで修了証がもらえます。受講時間の短縮、スケジュール調整等も付きやすい等のメリットがある為、私はWEB受講をおすすめします。

以下精神科訪問看護研修会(Web研修会)のWEB受講ページを貼っておきます。

精神訪問看護受講項目一覧

関東信越厚生局へ届け出の提出

精神訪問看護で介入するにあたり、事前に精神科訪問看護基本療養費(訪看10)の届け出が必要になります。届け出の書類の中で精神訪問看護で介入する方のスタッフの情報であったり、上記で受け取った修了書等必要になります。また、2度手間にならないよう、精神訪問看護に関わる加算(精神科重症患者支援管理連携加算(訪看27)、精神科複数回訪問加算(訪看28))もこのタイミングで届け出を提出するとよいでしょう。

以下関東信越厚生局のリンクを貼っておきます。

精神訪問看護で最も重要なポイント

精神科看護では、人と人を通じた対人関係の技術(コミュニケーション能力)が特に重要になります。その為、利用者との関係作りや構築が必要です。
無表情はせず、柔らかな口調や、穏やかな微笑みで相手の警戒を取り除いて、相手の話を落ち着いて聞いてあげる事がポイントになります。ですが、(特にアルコール依存を抱えた方等に多いのですが)、ご自身の身の上話をされ、その話を受けた看護師側は、「警戒を解いてくれた、心を開いてくれた」と受け止めてしまいますが、それは少し安直で、親しい中と思わせて、病状に対してネガティブな話をされたり、看護師に暴言を吐くようになってしまい、その結果、良好な関係が崩れてしまう事もあります。
そういった方への対処は、1人で抱え込まずにチームを作り関わっていくのが良いでしょう。患者さんもチームで受け入れられているとより一層安心感が増しますし、看護師も1人よりチーム(複数人)の方が負担やプレッシャーが軽減され、看護師の方もよりよいケアを提供できるかと思います。

おわりに

冒頭でもお伝えしましたが、精神訪問看護のポイントは、コミュニケーション能力と、なにもかも1人で抱え込まず、担当の医師やチームの看護師等といったまわりの人達も巻き込んで、ケアしていくことかなと思います。
精神疾患をお持ちの方への看護は、通常の看護と比べ少し特殊なケースが多く、普通の看護と比べて、ハードルも高いように感じます。しかし、今後の日本の看護業界の動きであったり、やりがいやスキルアップを意識している方であれば、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。