訪問看護サービスを提供する上での医療保険制度では、基本報酬の他に算定できる加算というものがあります。加算とはざっくりいうと、看護サービスに付随するオプション的なものです。今回は、医療保険の加算の種類と算定要件、算定額等について詳しく調べました。
※ 介護保険の加算については、こちらの記事で詳しくまとめていますのでご参考にしてください。
そもそも加算って何?
訪問看護の報酬は、医療保険、介護保険共に基本報酬が定められています。
この、基本報酬(単位)以外で付くものが、いわゆる加算と呼ばれるものです。
加算は、種類が豊富であり、算定できる回数等の制限が加算の種類によって異なる等、非常に細かく、加算のすべてを網羅するのはなかなか骨が折れますが、加算を知らない為に、本来請求できるものが請求出来てなかったとならないように、少しでも覚えておくと良いでしょう。医療保険の加算の種類について
医療保険の加算は、以下のようなものがあります。
月1回算定できる加算
ターミナルケア療養費とは?
訪問看護ターミナルケア療養費とは、ターミナルケアの支援体制を整備している訪問看護ステーションが、在宅等での終末期の看護の提供を行った場合に算定します。
算定要件
ターミナルケア療養費1と2の違いについて
ターミナルケア療養費1
在宅で死亡した利用者、または特別養護老人ホーム等で死亡した利用者に対してターミナルケアを行った場合、訪問看護ターミナルケア療養費1が算定できます。
算定額は、1回25,000円となります。
ターミナルケア療養費2
算定額は、1回10,000円となります。
24時間対応体制
24時間対応体制加算とは、利用者またはその家族等から、必要に応じて緊急時の訪問看護を行える体制や、電話などによるお問い合わせや、意見などを求められた場合に常時対応できる訪問看護ステーションが算定できる加算になります。
算定要件
算定額は、1回6,400円となります。
特別管理加算
特別管理加算は、特別な管理を必要とする利用者に対して、計画的な管理を行った場合に算定できる加算になります。
算定要件
上記に該当する利用者の算定額は、2,500円となります。
特別管理加算(重症度の高いもの)
上記に該当する利用者の算定額は、5,000円となります。
在宅患者連携指導
在宅患者連携指導加算とは、利用者の診療情報などを医療関係職種間で文書を共有し、各職種が診療情報を踏まえて対応した場合に算定する加算になります。
算定要件
算定額は、1回3,000円となります。
精神科重症患者支援管理連携加算とは
精神科重症患者支援管理連携加算は、重度の精神疾患患者等が、在宅で安定して過ごせるよう訪問看護ステーションの看護師、准看護師、保健師、作業療法士が保険医療機関と連携して行う訪問看護を評価する加算になります。
算定要件
精神科重症患者支援管理連携加算は、重症度(以下、Ⅰ、Ⅱ)によって「イ」「ロ」の2つに分かれます。
上記のⅠとⅡの2つが該当する場合は(イ)、どちらか1つの場合は(ロ)が該当します。
精神科重症患者支援管理連携加算(イ)
算定要件
異なる複数の職種間によるカンファレンスを週1回開催(うち月1回以上は多職種チームと保健または精神保健福祉センター棟と共同してカンファレンスを開催)する事。
算定額は、1回8,400円となります。
精神科重症患者支援管理連携加算(ロ)
算定要件
異なる複数の職種間と保健所、または精神保健福祉センター等が共同してカンファレンスを月1回以上開催する。
算定額は、1回5,800円となります。
情報提供療養費とは
訪問看護情報提供療養費とは、市町村(自治体)や義務教育諸学校、保険医療機関などに対して、訪問看護に関する情報を提供した場合に算定できる加算になります。以前は情報提供先は市町村等に限定されていましたが、平成30年4月の改定で情報提供先が拡大されました。
訪問看護情報提供療養費には、Ⅰ~Ⅲの3種類があり、情報提供先や対象者により異なります。
算定額は、Ⅰ~Ⅲ一律で1,500円となります。
情報提供療養費(Ⅰ)
情報提供療養費(Ⅰ)の算定要件
関係機関からの求めに応じ、利用者またはその家族の同意を得て、訪問看護を行った日から2週間以内に居住地の市区町村(自治体)、保健所、精神保健福祉センターなどに対して、書面による訪問看護に関する情報提供をした場合に算定できます。
情報提供療養費(Ⅱ)
情報提供療養費(Ⅱ)の算定要件
学校からの求めに応じて、利用者またはその家族の同意を得て、訪問看護を行った日から2週間以内に小学校や中学校、特別支援学校などの入学・転学時に、訪問看護の状況を示す文書を添えて必要な情報を提供した場合に算定します。
情報提供療養費(Ⅲ)
情報提供療養費(Ⅲ)の算定要件
保険医療機関、介護老人保健施設または介護医療院に入院または入所する利用者に対して、利用者またはその家族の同意を得て、保険医療機関の主治医に訪問看護に係る情報を提供した場合に算定します。
看護・介護職員連携
看護介護職員連携強化加算とは、たんの吸引が必要な利用者に対して、看護職員がたんの吸引等の業務について医師の指示のもとに計画書を作成し、訪問介護事業所の訪問介護員等に、たんの吸引等の業務や緊急時の対応について助言した上で、利用者の居宅等において、業務の実施が確認できた場合に算定できます。
※看護職員連携強化加算の目的は、訪問介護員がたんの吸引等の業務を安全かつ円滑に行うことができるようにすることの為、技術不足を補うための同行であったり、たんの吸引の技術を学ぶ事が目的の同行については、加算を取ることができません。
算定要件
算定額は、2,500円となります。
月2回加算
在宅患者緊急時カンファレンス
在宅患者緊急時カンファレンスとは、治療方針の変更時や、利用者の状態急変時等に、在宅医療を担う医師の求めにより、医療関係職種等がカンファレンスを行い、療養上に必要な指導を行った場合に算定できる加算になります。
算定要件
算定額は、2,000円となります。
週1回加算
長時間加算
訪問看護サービスでは、1時間30分以上続けて訪問看護を行った場合に、長時間訪問看護加算として加算が算定できます。
算定要件
算定額は、5,200円となります。
1日1回加算
緊急訪問看護加算
緊急訪問看護加算とは、前もって医療保険で計画していた訪問看護以外(緊急時)で、利用者や家族等の緊急の求めに応じ、主治医の指示により訪問看護を行った場合に算定できる加算になります。
算定要件
算定額は、2,650円となります。
※緊急の訪問看護を行った際は、必ず主治医に利用者の病状を報告します。症状や病状の変化によっては、特別訪問看護指示書の交付を受けて、訪問看護計画を見直すことが必要になります。
乳幼児加算
乳幼児加算は、6歳未満の利用者に対して訪問看護を実施した場合に1日につき1回限り算定する加算です。
算定要件
算定額は、1,500円となります。
毎回加算
精神科複数回訪問加算
精神科複数回訪問加算とは、精神科訪問看護基本療養費に要件を満たし、1日に複数回の訪問看護を行った場合に算定できる加算になります。
算定要件
算定額は、1日に2回の場合は、4,500円となり、3回以上の場合は、8,000円となります。
機能強化型訪問看護療養費
機能強化型訪問看護療養費とは、常勤看護職員を手厚く配置し、重症度の高い利用者の受け入れや24時間対応体制などを有する機能の高い訪問看護ステーションが算定できます。
機能強化型訪問看護療養費は1-3までと3つに分かれており、それぞれ詳しい算定要件、算定額は以下をご覧ください。
機能強化型訪問看護管理療養費1
算定要件
算定額は、12,400円となります。
機能強化型訪問看護管理療養費2
算定要件
算定額は、9,400円となります。
機能強化型訪問看護管理療養費3
算定要件
算定額は、8,400円となります。
※機能強化型訪問看護管理療養費は、動的に変わる利用者数や常勤看護数が、算定要件に絡んでくるので、月毎に要件を満たしているか必ず確認するようにした方がよいです。要件を満たした状態だと思っていても、実は半年前から要件を満たした状態でなくなっており、結果、過誤請求等を発生したり、取り下げや急な返金の催促等で頭を抱えるステーションも実際に多くあります。
退院時共同指導加算
退院時共同指導加算とは、介護老人保健施設や病院、診療所にいる入所者が、当該施設を退所や退院をする際、本人や担当訪問看護師への指導を主治の医師や関係者が共同して行い、安心して居宅療養できるようにする活動を評価する加算になります。
これから医療機関を離れ、生活を行う当該者が安心して暮らせる様に、また、担当の訪問看護師が適切なサービスの提供を行うための、共同指導を促進することを目的としています。
算定要件
介護老人保健施設や病院、診療所に入所や入院する者が、退所または退院するにあたり、指定訪問看護ステーションの看護師等が、当該者に対して、病院、診療所または介護老人保健施設の主治の医師や職員と、在宅で療養する上で必要な指導を行う退院時共同指導と、その内容を文書により提供する事で算定できます。
退院支援指導加算
退院支援指導加算は、病院などの医療期間(保険医療機関)から退院する利用者に対して、退院日に在宅療養上必要な指導を行った場合に算定できる加算です。
算定要件
算定額は、1回6000円となります。
おわりに
ここでは医療保険の加算について、加算毎の算定要件や算定額等をまとめてみました。このご時世、大抵のステーションは請求業務を手動で行うのではなく、なんらかの請求業務用ソフトを使用して請求業務を行う事業所が多いと思います。請求業務用ソフトを使用している事業所の医療事務の方であれば、算定額についてはソフトが自動的に算出してくれるので、そこまで気にしなくても問題ないかと思います。
最期になりますが、普段私たちが使用している電子カルテと、請求業務用ソフトを紹介します。個人的にはサポートが手厚く、電話応対等しっかりしているのでおすすめかと思います。
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