訪問看護で使用する介護保険の加算について、種類や算定要件等、詳しくまとめました

看護師の事務

訪問看護サービスを提供するにあたり、基本の介護サービス以外(オプションのようなもの)を付加する事で算定できる、加算の種類や算定要件、加算を取るうえでの注意事項などを詳しく調べてみました。

介護保険の加算について

月1回算定できる加算

緊急時訪問加算

介護保険の緊急時訪問看護加算とは、24時間365日、緊急の連絡や緊急の相談、緊急時の訪問依頼等を訪問看護ステーション等で対応する体制を構築している事で算定できる加算です。
この加算の対象者(利用者)の要介護(支援)度によっては、緊急時訪問看護加算緊急時介護予防訪問看護加算の2種類があります。
緊急時訪問看護加算と、緊急時介護予防訪問看護加算の違いは、利用者の介護度によるもののみで、算定要件と算定額は同じになります。

緊急時訪問看護加算と、緊急時介護予防訪問看護加算の算定要件

① 利用者やその家族からの連絡や相談窓口として、24時間対応することができる体制が作られている事。
② 計画していた訪問以外の訪問(緊急時の訪問)が、行える体制である事。
③ 都道府県に、届け出を提出している事。
④ 利用者やその家族に、緊急時訪問看護加算の算定についてあらかじめ書面で説明し、利用者やその家族から同意を得ていること。

算定額は、574単位になります。

特別管理加算について

特別管理加算とは、訪問看護を提供するにあたって、特別な管理を必要とする利用者に対して、計画的な管理を行うことで算定できる加算になります。この特別管理加算はⅠとⅡがあります。ⅠとⅡのそれぞれの算定要件や、算定額の違いについて調べていきます。

特別管理加算Ⅰ

算定要件
以下の状態にある利用者に対して、訪問看護の実施に関する計画的な管理、及び訪問看護を実施する。
① 留置カテーテルを使用している状態
② 気管カニューレを使用している状態
③ 在宅気管切開患者指導管理
④ 在宅悪性腫瘍等患者指導管理

算定額は、500単位になります。

特別管理加算Ⅱ

算定要件
以下の状態にある利用者に対して、訪問看護の実施に関する計画的な管理、及び訪問看護を実施する。
① 在宅自己腹膜灌流指導管理
② 在宅血液透析指導管理
③ 在宅酸素療法指導管理
④ 在宅中心静脈栄養法指導管理
⑤ 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
⑥ 在宅自己腹膜灌流指導管理
⑦ 在宅自己導尿指導管理
⑧ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
⑨ 在宅自己疼痛管理指導管理
⑩ 在宅肺高血圧症患者指導管理
⑪ 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態
⑫ 真皮を越える褥瘡の状態
⑬ 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態

算定額は、250単位になります。

ターミナルケア加算

ターミナルケア加算とは、死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを要介護者に対して行った場合に、算定できます。

算定要件

① 訪問看護ステーションで、24時間連絡体制が確保された体制であり、必要に応じて指定訪問看護を行うことができる事業所である事。
② 主治医との連携の下において、訪問看護におけるターミナルケアに係る計画及び支援体制について、利用者・家族に説明を行い、同意を得てターミナルケアを行っている事。
③ ターミナルケアの実施で、他の医療及び介護関係者と充分な情報連携ができている事(サービス担当者会議等の情報共有等)。
④ ターミナルケアの提供について訪問看護記録書に記録されている事(アセスメントおよび対応の経過等)。

特別地域加算について

特別地域加算とは、離島や中山間地域にある事業所、利用者に対して、訪問看護を行った場合に算定できる加算になります。特別地域加算の種類は、以下の3つがあります。

特別地域訪問看護加算

特別地域訪問看護加算は、離島等の一定地域に所在する事業所が、行う訪問看護についての加算です。サービス費用の15%が特別地域訪問看護加算として設定されています。

中山間地域等提供加算

中山間地域等居住者提供加算は、中山間地域に居住する利用者に対して、通常の事業実施地域を超えて訪問看護を行った場合の加算です。サービス費用の5%が中山間地域特別提供加算として設定されています。

中山間地域等小規模事業所加算

中山間地域等小規模事業所加算は、中山間地域にある小規模事業所が行う訪問看護についての加算です。サービス費用の10%が中山間地域等小規模事業所加算として設定されています。

特別地域加算については、以下のページが参考になりますのでぜひご覧ください。


看護介護職員連携強化加算

看護介護職員連携強化加算とは、たんの吸引の必要なご利用者に対し、看護師がたんの吸引等の業務について、医師の指示のもとに計画書を作成し、訪問介護事業所の訪問介護員等に、たんの吸引等の業務や緊急時の対応について助言し、ご利用者の居宅等において、業務の実施が確認できた場合に算定できる加算になります。

看護師が介護師に同行し、てご利用者宅を訪問した場合や、安全なサービス提供体制整備や連携体制の確保のための会議に出席した場合も算定できますが、その内容を訪問看護記録書に残さなくてはなりません。

算定要件

➀ 24時間体制の訪問看護事業所である事。
➁ 緊急時訪問看護加算を届け出している必要がある事。
※ 看護師が介護士に同行し、実施状況の確認をした際、提供時間が超過してもケアプランにある時間の訪問看護費が算定でる事になります。

算定額は、250単位になります。

看護体制強化加算とは

看護体制強化加算とは、2015年4月の改定により、新たに設けられました加算になります。看護体制加算の算定要件を満たし、高度な医療を望むご利用者に対する訪問看護体制を整え、提供した場合に、事業者に対して所定の単位数が算定される加算になります。看護体制強化加算にはⅠとⅡがあります。

看護体制強化加算Ⅰ

算定要件

① 算定日が属する月の前6ヵ月において、ご利用者数の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定したご利用者数の割合が50%以上である事。
② 算定日が属する月の前6ヵ月において、ご利用者数の総数のうち、特別管理加算を算定したご利用者数の割合が30%以上である事。
③ 算定日が属する月の前12ヵ月において5名以上のターミナルケア加算を算定する事。

算定額は、600単位になります。

看護体制強化加算Ⅱ

算定要件

① 算定日が属する月の前6ヵ月において、ご利用者数の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定したご利用者数の割合が50%以上である事。
② 算定日が属する月の前6ヵ月において、ご利用者数の総数のうち、特別管理加算を算定したご利用者数の割合が30%以上である事。
③ 算定日が属する月の前12ヵ月において1名以上のターミナルケア加算を算定する事。

算定額は、300単位になります。

退院時共同指導加算

退院時共同指導加算は、医療保険と同様、病院や老健などに入院(入所)中の利用者で、退院(退所)後に訪問看護を利用する利用者に、退院(退所)時に訪問看護ステーションと入院(入所)施設が連携して、退院(退所)後の在宅療養について指導を行った場合に算定できる加算になります。

算定要件

① 主治医の所属している、保険医療機関に入院中若しくは、介護老人保健施設、介護医療院に入所中である事。
② 退院(退所)後の在宅療養について、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)と退院(退所)施設の職員(医師やケアマネ)が共同で指導する事。
③ 退院(退所)後の在宅療養について、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)と退院(退所)施設の職員(医師やケアマネ)が共同で指導する事。
④ 指導内容を文書で提供する事。

算定額は、600単位になります。特別管理加算対象者は月2回まで算定できます。

週1回算定できる加算

複数名訪問加算

複数名訪問加算とは、訪問看護サービスを提供する上で、看護師等1名での対応が困難な場合に、複数名で訪問することで、算定できる加算になります。

複数名訪問加算Ⅰの算定要件

2名の看護師等が訪問する事。
算定額は、30分未満の場合で、254単位になります。
30分以上の場合は、402単位になります。

複数名訪問加算Ⅱの算定要件

1名の看護師等と、1名の看護補助者(准看護師等)が訪問する事。
算定額は、30分未満の場合で、201単位になります。
30分以上の場合は、317単位になります。

初回に算定できる加算

初回訪問加算

初回加算とは、
介護支援専門員(ケアマネジャー)が新規でケアプラン(居宅サービス計画)を作成した場合
要支援者が要介護認定を受けたときや、要介護状態区分が2区分以上変更して認定を受けた際の、ケアプランを新たに作り直す場合
に算定できる加算になります。

算定額は、300単位になります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。ここでは介護保険の加算についてまとめてみましたが、訪問看護サービスを提供する上で、使用する介護保険以外に医療保険というものがあります。医療保険の加算については、こちらの記事で詳しくまとめています。
本来請求できるはずが、「加算が取れる事を知らなかった為に、未請求だった。」という事のないように、少しでも加算について知っていただければ、筆者はうれしく思います。